王の舞の「舞」の説明

装束は、頭部には鳥(鳳凰)を模した冠(鳥甲)を被り、顔面に鼻高面(天狗面)を付けます。 そして、赤い着物に角帯、着物下には伊達下げと称している前垂れを付けます。後腰には守り刀と扇子、 腰帯の左側に新しい白紙をはさみます。手には白手甲をつけ白足袋を履き履物はありません。そして鉾を持って舞い始めます。

舞は、清義社及び保存会の会員によって奏じられる、笛と太鼓の囃子に合わせて行われます。 鉾を持って拝むところから始まり、種蒔き→地回り→犁(すき)を起こす動作→鉾返し、(再び)種蒔き→地回り→犁を起こす動作を繰り返します。 鉾を離してから肩のしょう→腰のしょうと続きます。 舞の解説をした古文書は残ってはいませんが、農耕の所作もあり、大地を切り開く(開墾)と取れる所作、地の悪霊を鎮めるかのように 解釈出来るところもありますが、五穀豊穣を祈願するとされています。

動作は、激しい動きはなく、演ずる時間は約50分です。 終始ゆるやかなため、一見楽そうに見えますが、筋力や柔軟性も要求されるため、舞人にとって体力の負担は大きいものがあります。 千葉大学の橋本教授は「抑制された優雅な演技が特徴で、過度に不自然な動作や姿勢を持続しながら、 流れるような曲線を緩やかに描き出している」という言葉で表現されています。

舞全体を通じて仰向き加減や、指の角度に至るまで細かい決めがある上に、体格の個人差から、 鉾の持ち方、足の巾の取り方、腕の角度などの違いが微妙に舞姿に影響します。舞が要求される美しさと優雅さを演出するために、 舞人はもちろん指導者にとっても、練習は大変な苦労があります。 尚、新聞等のニュースでは他の王の舞は「勇壮」と表現されるものもありますが、 彌美神社の王の舞はそれゆえ「優雅に」と表現するようにお願いしているところです。