「ふるさと」の主宰者
刀禰さん
私は汽車の座席で
暫く向かい合っただけで
今後再びお会いする機会はないでしょう。
そのあなたに
かれこれ申し上げるのは失礼ではありますが、
刀禰さん
あなたは「ふるさと」創刊以来20余年、
初志を変えず
浮世の荒波にも呑まれず
よく戦ってこられましたね。
私はあなたの強靭な意志に
親しみと尊敬を覚えます。
ふるさとの真の文化のために、
どんな困難にもめげず戦いつづけて下さい。
そうして若い人々の心を、
たましいの「ふるさと」にまで
導いてやってください
けがれのない清浄に〜 〜 〜
うそのない純真に 〜〜〜〜〜〜
せせこましくない大らかな心に
ものや形にしばられない自由の世界に
貧しさをかこたない豊かな心に
はきちがえた自由を、魂の自由の世界に
導いてあげて下さい
刀禰さん
あなたは今日お目にかかった時のように
いつまでも
ちびたネクタイで胸を飾る真似をしないで
あなたのたましいの輝きであなたを飾ってください。
貧乏は恥ではありません。
けがれや、うそや、高ぶった心を、
スマートな背広につつんで
魂をごまかしている人々こそ
恥知らずなんですから―――
刀禰さん!
この世にいろいろな惑があります。
あなたの志を高く誘惑の手の届かないまでに
昂揚して下さい。
私はあなたの働きの上に
限りなく祝福を祈ります。
福田 賢太朗
1951.5.14 福井行きの車中にて |